2016.08.14

進化してきたセルフサービスBIのいま
Panorama Software BI Blog より

 セルフサービスBIはBIのもっとも重要なトレンドのひとつです。2017年までに多くの企業の業務ユーザーとアナリストはセルフサービスツールを使って分析のためのデータ準備ができるようになると予測されています。その一方で、セルフサービスBIにも様々な問題があることを知っておく必要があります。セルフサービスBIのトレンドに乗じる前にそのメリットや問題点について十分な情報を得たうえで、最大限に活用するための周到な準備をしておくことが必要です。

 過去の問題点
 かつては業務ユーザーがデータにアクセスしようとするとき、その都度IT技術者に要請してデータにアクセスしてもらう必要がありました。BIツールは今ほど直感的ではなく、IT技術者を介さずに利用する方法はありませんでした。その結果、分析プロセスや洞察にたどり着くプロセスに大幅な遅れや障害をもたらしたため、ユーザーはより使い勝手のいいツールを必要とし、正確なデータに基づいてタイムリーに意思決定を行うスピーディなソリューションが必要でした。ユーザーがIT技術者に依存しているだけでは、レポートの配信や意思決定プロセスに大幅な遅れが生じますBIツールは企業の課題に対応するべく進化を始め、新しい技術の登場で一般の業務ユーザーもセルフサービスBIを活用できるようになってきたようです。

 セルフサービスBIとは何か?
 分析のためのデータの整備は、BIやデータディスカバリツール、高度な分析プラットフォームを使用する業務ユーザーにとって、もっとも困難で膨大な時間のかかる課題のひとつです。しかしデータの整備機能を備えたセルフサービスBIが登場し、業務ユーザーやアナリストはセルフサービスBIの範囲を拡大して情報の管理、抽出、加工、データベースに書き出す (ETL) 機能を提供されます。
 それによってデータへのアクセス、プロファイリング、整備、統合、必要な情報を整理し、モデル作成、BIやアナリティクスプラットフォームによって分析、使用するためにデータを充実することが可能になります。
 セルフサービスBIはアナリストのような専門的知識のない業務ユーザーも、データソースにアクセスして分析作業を遂行できる方法です。
 セルフサービスの進化によりBIツールはユーザーにとって使い勝手がよくなり、一般ユーザーがIT技術者に頼らずにデータソースにアクセスして分析作業を実行できます。
 一般ユーザーが自ら行った分析に基づいて意思決定が可能になると、BI担当者やITチームは単純にレポートを生成する以上の重要なタスクに専念できるようになります。これと同時にユーザーは自由裁量で必要に応じて自分のダッシュボードやレポートを構築して使用することができます。そうすればユーザーはよりスピーディにデータについての洞察を入手でき、意思決定を行い状況に応じた対応が可能になるでしょう。
 エンドユーザーのニーズに対応するためには、セルフサービスBIツールは直感的でユーザーが使いやすいものでなくてはなりません。

 現在の課題
 現在のセルフサービスBIの課題のひとつは柔軟性です。一般ユーザー、アナリストの両方にとって使いやすいものである必要があります。しかし、企業内の誰もがデータにアクセスすることができるようになった場合の最大の課題は、どのようにしてシングルバージョンオブトゥルース (single version of the truth) を維持するかです。2016年の予測では、セルフサービスBIの取り組みが十分に管理され、業務にマイナスの影響を及ぼす情報の不一致を防ぐことができる企業はわずか10%にも満たないといわれています。
 データを分析する業務ユーザー数が増加すると、誰でもデータにアクセスできることから、複数バージョンの真実が存在するという問題が生じる可能性があります。BIが備えるデータディスカバリ機能、多構造化データへのアクセス、データを整備するツール、高度な機能の活用などが広く使われるようになると、アナリティクスを使用するユーザーの数はさらに増加することから、ますます管理統制する体制が必要となってくるでしょう。

 この問題に対応するために管理の方針を徹底すると、さらにデータを参照できる権限を持つ人を制限することになり、最終的にエンドユーザー数を制限することになります。ユーザー数が過度に制限されると、結局開かれたBIを使用する以前の姿に戻ることになるでしょう。したがって大きな課題は、セルフサービスと管理されたデータのバランスをいかに保ってシングルバージョンオブトゥルースを獲得するかということです。

 成功のカギとIT部門の役割
 セルフサービスBI導入の成功の鍵はガバナンス(管理統制体制)です。それにはまずデータの管理方針が整っていなければなりません。データの管理方針にはレポート生成や共有のプロセス、機密情報へのアクセス許可とその制限の方針や規定、データセキュリティの必要なレベルを守りながら、ユーザーに提供するデータの質をユーザーが満足するように、どのように維持するかということを盛り込む必要があります。
 しっかりした管理統制のもとで運営されるセルフサービスBIであれば、業務ユーザーはどのようなデータも自由に分析し、その結果得られるあらゆる洞察についてアクションを起こすことができるようになります。同時に、IT部門はシステム管理を強化することができます。その結果、完全なウェブベースのBI環境上で、企業全体で「ひとつの真実 (one version of the truth) 」を維持することができます。そのためには大企業で求められているような包括的な管理統制体制と高いレベルのデータセキュリティを確保する必要があります。
 セルフサービスBIツールは進化を続け、今後エンドユーザーはさらに高機能な分析やビジュアル表示が利用できるようになります。そうした中でIT部門(情報システム部)の役割はどのようになるでしょうか。今後はBIの現場にIT部門は不要になるとの考え方もあります。しかし実際はそうではありません。
 IT部門はBI活用の現場に引き続き関わる必要があります。どのデータが活用できるか、あるいは情報を照会する方法などを、企業のITチームが業務ユーザーに教育できれば理想的です。またデータウェアハウス、データマートを構築し、高度なIT技術や知識を備えていなくても業務ユーザーがダッシュボードやレポートの作成、データのクエリを行えるようにする必要があります。フォレスターリサーチ社の副社長エベルソン氏によると、これからのBIは「洞察の自動提供システム」になるだろうと予測しています。洞察の自動生成システムは「消費者の時代」のニーズを表しています。「消費者」、言い換えると業務ユーザーが主体になってBIを操作します。このときIT部門は業務ユーザーを支援するための存在でなければなりません。
 セルフサービスBIを導入することに伴う重要なポイントは、業務ユーザーとIT部門を完全に分離するのではなく、双方がそれぞれの目標を達成するために協力体制を確立することでしょう。業務ユーザーはデータ分析のスピードと正確性が向上し、IT部門もこれまでダッシュボードとレポートの作成に費やしていた時間をより重要な活動に振り向け、企業活動を支援することができます。
 セルフサービスBIの新たな課題に取り組むBIツールがリリースされました。パノラマソフトウェアのNecto16は管理統制されたセルフサービスの使用感を実現します。その上、セルレベルのデータについてまでも業務ユーザーとIT担当者が連繋を取ることができ、洞察を共有し、協力してシングルバージョンオブトゥルース (single version of the truth) を維持することができます。