金融機関の集中管理型BIシステム
【Panorama Software BI Blog より】
BIやスマートデータアナリティクスの活用はすでに身近なものになっています。金融機関はBIを活用し、利益を増やしリスクを軽減することによって競走上の優位性を確保しようとしています。常に変化を続ける金融ビジネスでは、取引システム上のデータに変動が発生した場合にはアラート機能や通知が必要です。データにアクセスできると同時に、何らかの異常値が発生すればこれを追跡管理する必要があります。すべての管理職やユーザーは、客観的な数値を基にした全社統一の分析を参照する必要があります。もちろんユーザーは事前に設定されたデータアクセス権限にそって、認証の範囲内でのみデータを利用できるような設定が必要です。
つまり金融機関には集中管理システムが必要であるということです。集中管理システムでは、業務ユーザーとIT担当者が共同作業で分析を行います。ユーザーとIT部門の双方が業務プロセスやデータフローの定義、許可と制約の設定、ユーザーとIT部門がそれぞれ達成したい目標の設定などのために協力する必要があります。業務ユーザーは業務上の困難を解決するためにどのソリューションを使いたいかを決定しなければなりません。またIT担当者はデータセキュリティを管理するために、そのようなソリューションをどのように導入展開するかを判断する必要があります。
BI展開には集中管理型と分散型という2つの主要なモデルがあります。具体的な項目に入る前にまず、この2つの違いについてざっと説明しましょう。これで金融機関ではBIプロジェクトの成功を確実なものにするために、なぜ集中管理型が必要か、その理由をより理解しやすくなります。
集中管理型BIでは、ユーザーは互いに連携して分析作業を行います。一方分散型BIでは、各人はサイロの中にこもって作業を行うようなものです。–つまり、アナリストが洞察の発見をしても、その発見や知識は一人のユーザーのPC上にとどまり、集中管理型の環境のように共有されることがありません。
集中管理型BIでは、全社統一分析が確保されます。一方、分散型BIでは、膨大な数のExcelワークシートが生成されることになり、それらはマージすることは不可能です。多くのユーザーが分断した状態で作業を行うと、知識や情報の共有が行われません。分散型BIでは通常、一人のアナリストが別のアナリストにExcelファイルを次々と送信するため、IT部門ではそれらの多くのバージョンの分析結果を維持する必要があります。これが一般的に知られる「エクセル地獄」という状況で、これはとりもなおさずコントロール不能な膨大なデータがもたらす破局を意味します。一方、集中管理型BIでは全社統一分析が確保され、データの不要なコピーが発生しません。ユーザーは共同作業を通じて同一の適切な文脈上で情報や洞察を共有し、分析を進めることができます。
集中管理型BIではすべての機能が統一されたソリューション上に用意されているため、ユーザーのBI使用頻度が確実に高くなります。ユーザーは他のユーザーの作業から学び、洞察を取得します。適切なデータの文脈上でユーザー間でディスカッションを開始することができます。すべてはセキュリティを確保したうえで行われます。ユーザーはデータ漏えい、情報漏洩などの不安なく信頼して作業を進めることができます。
集中管理型BIはデスクトップのソリューションのように完結したアプリケーションではありません。集中管理型BIは企業やユーザーのニーズに応じてカスタマイズが可能です。カスタマイズができるということはIT部門、業務ユーザーの双方にとって非常に重要です。
集中管理型BIではセキュリティ対応と管理統制のしやすい環境はIT部門の責任で行います。アナリストはセキュリティ違反のリスクの心配なく、簡単かつ迅速に帳票を共有し、配信できます。アナリストは数千人の銀行管理職にダッシュボードを配信しますが、各部門のマネジャーは各自がアクセス許可のあるデータを見るだけです。これでアナリストの業務は、常にユーザーからの同じような質問に回答することではなく、新しい洞察を発見することへと変化していきます。このような進化した業務はすべてのユーザーが相互の作業から学習する集中管理型のシステムで実現されます。IT部門の専任者は企業内のデータの移動を管理することができます。
集中管理型BIは展開が容易にでき、BIを使用するユーザー数の増加にも対応します。IT部門が新規ユーザーにアクセス権限を提供する場合、デスクトップにインストールする必要はありません。必要なことは新規のユーザーにユーザー名とパスワードを付与し、データアクセスの権限を設定するだけです。IT担当者はひとつに統合されたウェブソリューションだけを管理すればよいため、インストールや保守の手間を省くことができます。
金融機関のデータの混沌
BIプロジェクトの適切な導入はどの企業でも非常に大きな課題です。特に金融機関では取り扱うデータの性質により、BI導入時に他業種よりも大きな課題に対応しなければなりません。金融機関では、クレジットカードの利用履歴、銀行口座、銀行取引その他の金融関係情報といった非常に慎重に扱うべきデータを生成、収集し、分析します。このようなデータは厳重な個人情報保護のルールによって統制されますが、そのためには追加的なセキュリティ対応や特別なデータ管理体制が必要になります。必ずしもすべてのユーザーがすべてのデータを利用できるわけではありません。金融機関ではBIチームをまとめる多様なモデルを試験的に実行してきましたが、結果的にいくつものデータサイロがつくられることになってしまいました。それぞれのチームではユーザーがさまざまな人と作業を行い、独自のデータを保有したまま各自のデスクトップ機のみで作業し、データを編集、コメントを追加し、分析を行います。こうするとデータは統合されず、それをさまざまな部署がアーカイブ内でサイロのように分断して保管することになります。
1日の業務終了時には、アクセス制限されたデータを共有することを恐れて、企業全体の利益になる可能性があるようなデータは共有されません。ユーザーが発見する洞察はただ1つのチーム内にとどまり、共有されません。そのような状況ではデータを統合することは不可能です。さらにデータ統合の試みが失敗するうちに、同じファイルに多くのバージョン、つまり「'真実'に複数の解釈」が存在することに気づきます。「主要な管理数値に不統一な解釈」が存在するために、経営陣は業務プロセス全体を見通し、把握することが妨げられます。データが混沌とした状態のために、経営陣は損益が発生したことを報告されても、原因となった取引を特定することもできなくなります。そのため、予算編成、計画策定、帳票生成といった業務は困難な、正確でない活動となり、したがって前向きな成果は得られません。サイロ化されたデータでは、経営陣はデータに基づく効果的な意思決定を行うことが不可能になります。また不正確なデータは、信頼性を下げ時価総額にマイナスの影響を与える可能性があり、危なっかしくて一般に公表できません。
集中管理型BI = 全社統一分析と、データセキュリティを確保
全社統一分析を維持しながら、データの正確性とデータプライバシーをも確保することは、不可能な課題のようにも見えます。しかし不可能ではありません。情報はすべてのユーザーが同じかつ唯一のwebソリューションで使用できるように更新する必要があり、このときIT担当者は、データにアクセスする許可を得ているユーザーとそうでないユーザーを管理しなければなりません。ベストのソリューションとは、集中管理された環境下でBIユーザーがデータ分析を行うことが出来るソリューションです。
そうすれば部門間で洞察や資源の共有ができ、IT部門は確実にデータを保護し、法的規制を順守しながらデータ全体を統制します。さまざまな部署のユーザーがデータからメリットを得ることができますが、どのユーザーがどのデータを見るか、何が公開されているデータで、何が部外秘のデータかなど、そういったことはすべてIT部門が判断します。このようなモデルを採用することでデータプライバシーと全社統一分析が確保できます。IT部門はユーザーが必要とする資源を提供しサポートを行います。
金融機関がBIを活用するメリットは以下のとおりです。
BI活用によって収益源を追跡管理し、どの商品やサービスが最も利益率が高いかを特定できます。また顧客データから洞察を取得できます。洞察は顧客ニーズ、感情分析、行動データなどから取得します。金融機関は洞察を行動にうつし、顧客ニーズに対応するように商品やサービスを改善し、市場での競争優位性を生み出すことができます。
集中管理型BIによって企業内のデータをひとつに統合することができます。これによってマーケティング部門では、アップセルやクロスセルの新しい機会を見極めるための洞察を発見できます。また顧客に対してより適切な提案を行うことによって販売促進の取組みが改善されます。例えば、家計用の口座を名寄せすると、夫と妻の両方に、まとめて販売促進のサービスを提案することができます。あるいは子ども向けの普通預金口座の提案では、大学生の年齢の子どもに対して「学生口座」として個人向けの提案をすることができます。
BI活用とデータ分析によって顧客解約率を低減する新しいプロセスを策定することができます。顧客の行動、嗜好、習慣を分析することによって、顧客ニーズに対応した、顧客の問題を解決する金融商品を個別に提案することで、顧客の維持率やロイヤルティを高めることにつなげることができます。
銀行業務をBIで分析することによって、資源を最大化し、コストを最小化できます。また社員の業績、特に顧客に対応する社員の業績を分析し、顧客満足の改善や待ち時間の短縮などにつなげることができます。
多くの分野でリスクを軽減できるような、業務にすぐに役立つ洞察を発見するためにBIを活用できます。例えば顧客への融資のリスクを算出することができます。BIソリューションは複数のデータソースから取得したデータを分析し、意思決定の改善に役立つ洞察を発見します。
金融機関は顧客の取引履歴やデータを追跡管理し、異常値が発生した場合には迅速に検出することができます。最新鋭のBIツールNecto™には、企業が綿密に観察したいデータについて異常が発生した場合、通知を受信できるように設定する機能があります。この場合、データに何か不審な変動があればユーザーには即座に通知がメールで送られます。BIを使用すると不正取引を減少させることに効果があります。さらに新しい規制に対応するために、社員間のコミュニケーションを追跡管理することも可能です。さらにもう一つ、集中管理型BIの大変重要なメリットは、情報のサイロの間で分断されて閉じ込められていたデータを、再活性化して統合して分析することで、企業全体の信用リスクを予測できるようにしたということです。
Necto™を選ぶべき理由とは
優れたBIソリューションとは、展開が容易にでき、見やすいダッシュボード、最新鋭のアナリティクス、洞察やKPIアラートの自動生成、これらすべての機能を集中管理型の環境で提供するシステムでなくてはなりません。
ユーザーは複数のデータソースにアクセスし、すべてのデータを統合し、マッシュアップする必要があります。また、スクリプティングが不要な集中管理された環境で、安全な方法で拡張、展開をする必要があります。ビジネスで発生する状況を常に把握するために、KPIアラートや通知を自動受信できる機能も必要です。
Necto™はそれらの機能すべてを提供し、同一のプラットフォーム上で共同作業ができ、洞察の発見を共有し、ディスカッションが可能です。表面には現れにくい洞察をデータの中から明らかにし、見やすく美しいダッシュボード上にインフォグラフィックを使って表示し、よりわかりやすくデータを見ることができます。ウェブ上で展開が可能なオンプレミスのソリューションであり、集中管理されセキュリティ対策も万全です。
Necto™を集中管理型BIソリューションとして採用した場合の活用のシナリオ
- CEOが管理職とアナリストのミーティングを招集する場合、売上、コスト、利益についてメンバー間の合意ができています。メンバーは誰のデータが正しいかについて議論することはありません。ミーティングは懸念事項の明確化、アクションプランの策定、データ主導型の全社的な意思決定の実行を目的として行います。
- CFOは企業全体の損益ポジションを毎日チェックすることができます。1度クリックするだけでそれぞれの地域の貢献度を画面で確認でき、ドリルダウンするとさらに詳細なデータを確認できます。データに異常値が発生した場合にすぐに把握できるよう、通知機能やアラートを設定することができます。またアラート受信者にビジネスユニットマネジャーなど適切な担当者を追加すれば、業績に異常値などが発生した場合に認識することができ、問題解決のためのアクションを示唆することもできます。
- 副社長は企業のすべてのレベルにおける戦略的目標に対する達成度にアクセスすることができ、地図位置情報機能を活用してあらゆる地域の業績もデータをドリルダウンして確認することができます。
- IT部門がデータ全体を管理統制し、各ユーザーの役割に応じて権限と制限を設定します。このためIT部門はデータセキュリティと正確性を維持しながら、ユーザーは管理されたセルフサービス機能を活用できます。
- Necto™はウェブベースで、集中管理されているため、データがリアルタイムで更新され、どのユーザーも最新の全社統一分析を見ることができます。経営者は管理職の計画や予測を確認し、より効果的な投資戦略やマーケティング戦略の策定を行うことができます。
- 金融機関で発生する多数の取引(トランザクション)を統合することと標準化することを自動で実行することが出来ます。帳票の生成がスピーディーになり、それらは正確でありかつ全社統一分析に基づいており、規制を順守したものになっています。
(補足)
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全社統一分析
(シングルバージョンオブトゥルース:Single version of truth)とは、
客観的な事実・数値から得られた全社統一の報告・見解・分析
であり、以下のように詳述できる:
経営の意志決定に於いて、部門等により異なる視点により得られた、数値、事実、信条、判断について、全社統一的な立場よりそれらを検証し、全社統一の数値、事実、信条、判断として採用することが出来る環境、を言う。またはその結果得られた、全社統一の数値、事実、信条、判断を言う。
この環境が実現できない場合には、部門ごとに異なる数値や判断が乱立し、検証が不可能で(極めて難しく)、整合性を得るのに多大な時間・労力を強いられる。
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